政府は全国民に毎年の歯科健診を受けてもらう「国民皆歯科健診」の導入に向けて検討する方針をまとめました。このことは一体何を意味するのでしょう。
最近、歯周病に対する認識が変わってきています。もちろん今に始まったことではありませんが、ここへ来て大きく取り上げられることが多くなりました。なぜかと言うと、歯周病が人間の体に大きな影響を及ぼすことが明確になってきたからです。
歯に付着したプラーク(細菌)は、歯肉に出血や腫れなどの炎症をもたらし、歯を支える骨までも溶かしてしまいます。その結果、歯は動揺し噛めなくなり、抜歯の対象となったり自然に脱落するまでに至ります。
一昔前までは、これを予防し機能を回復させることが歯周病治療の大きな目的だったのですが、これからはもっとグローバルに考えなければなりません。
これらのプラークは、歯の機能や存在を脅かすのみならず、プラークによって作り出された酵素・毒素・炎症物質などと一緒に、ハグキや骨の中の毛細血管に容易に入り込み、全身に運ばれ、体のいたるところに悪影響を及ぼすことがわかってきました。
個々の全身疾患との因果関係が全て解明された訳ではありませんが、少なくとも、歯周病と全身疾患の関連性が統計的に明らかになってきています。誤嚥性肺炎、動脈硬化、心内膜炎、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中、糖尿病、早産、関節リウマチなど、多岐にわたります。2021年9月には、歯周病菌が認知症の原因であることが明らかにされました。
人間が怪我をすると、その傷から多量の細菌が体内に侵入します。通常は傷が塞がれば細菌の侵入は止まりますが、歯周病では24時間、そして炎症がある限り、細菌が体内に侵入し続けることになります。怪我による傷が塞がらず開いたままになっていることを想像してみてください。体に悪い影響をもたらすことは言うまでもなく、強いては健康寿命の短縮につながる可能性も全く否定できません。もちろん歯周病のみに限らず、進んでしまった虫歯に関しても同じことが言えるでしょう。歯の治療は人間の生命に深く関わっているのです。
従って、我々歯科医師は人々の健康寿命を少しでも伸ばすために、歯周病をはじめとした口腔疾患の治療に尽力し、治療後の口腔内のケアを継続してゆくことで、体内への細菌の侵入を防いでいかなければなりません。
このことについて、当院のスタッフにはことあるごとに説明、そして理解させ、毎日の診療に臨ませています。
我々は、口腔内の健康を維持し、他の病気の誘発を抑え、健康寿命を延ばすことを常に目指しています。
そして、皆様の命を伸ばす仕事に携われることに深く感謝しています。
小川歯科 院長